土曜日, 11月 07, 2009

「バレエ・メカニック」津原泰水

バレエ・メカニック (想像力の文学)
津原 泰水
早川書房
売り上げランキング: 115434
おすすめ度の平均: 5.0
5 幻想小説発サイバーパンクSF行

ハム子が、今年出た新刊の中で一番面白いといっていたので、読んでみた。
※今年読んだ一番面白い本は別にあるらしい。

最初から、「君」という人称代名詞がでてくるのだが、少々奇異な印象を受ける。「君」が指しているのは、この章の主人公にあたる天才造形家 = 木根原魁 である。

後々、こういった人称代名詞をつかっている理由もわかるが、これに引っかかりを覚えて登場人物と設定を把握するのに、少々時間がかかった。

第一章は、9年前に海でおぼれて大脳皮質が壊死し植物状態にある「君」の娘 = 理沙 の特殊な能力によって人々は幻覚の世界に取り込まれており、壊れた現実感の中で物語が進んでいく。
早くから、「5番目」というキーワードが登場してくるが、これは一章の中で解決される。一章だけで、物語が一旦完結している印象を受けた。

二章は、その3年後の物語。
今度は、理沙の主治医であった異装倒錯者の医者 = 「<彼女>」= 龍神好実を中心に物語が展開する。
娘が生きているのではないか?という妄想から逃れられない木根原と共に「<彼女>」 による探索のエピソード。
後から考えると、三章の前振りが多かった。まぁ、この章は多分一番普通に読める。

さて、第三章になると、時間軸は、40年後の未来に移る。
この未来は、電脳コイルや攻殻機動隊を連想させるような肉眼でみたモノゴトではなく、高度な拡張現実によってみえているモノが<現実>ととらえるような、感覚の転換が起こっている世界である。

三章からの世界観の断絶具合は、何かに似ている気がしたのだが、森博嗣の「四季 冬」 第四章 だった。

まぁ、幻想文学 というより SF だと思って読んでいれば、特に違和感はないかも。

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